2:アルファはノスタルジー(1997/9/14)
 いきなり爆弾の様なタイトル.....。アルファを選んだのがノスタルジーなら、別にスバル360でもカローラ1100でもいいじゃないか?という自問自答が.....。

 スバル360にしなかった理由はさておき...「味」とは、はっきり言ってしまえば「ノスタルジー」です。もう少し柔らかく言えば、その道具の発生と進化過程における、設計上の突然変異的なコンセプトと、それにまつわるクセを懐かしむ事です。正しいか正しくないか分からないけれど、その時点でそれぞれの企業が主張した「回答」でした。だからそれは不変ではありません。
 前に書きましたが、自動車とはそれらの突然変異を全て捨て去る事で、我々の身近な存在になりました。それが現時点における、殆ど全ての自動車メーカーにおける共通する答えです。そして環境への不適合という、クルマを駆る喜びと引き替えに、避けて通してきた必要悪も捨て去る覚悟までしようとしています。そうすることによって、クルマは世界中の人々に「道具」として認知されているのが現状です。「フェラーリやロールズは今だにそこから離れたクルマ作りをしてるじゃないか」と言われるかもしれません。でもフェラーリやロールズは一般のための道具ではありません。

 山奥に住む、おウメ婆さん(架空の人物)の沢庵漬けは、知る人には絶品だけど、万人には到底そのおいしさを分かって貰う訳には行きません。買いに行くのも大変だし、好みも分かれます。でも化学調味料をふんだんに使ったコンビニの漬物なら、みんなが買えます。でもそれは沢庵本来のクセや漬けた人のポリシーは味わえない。
 同じ様な事が、韓国でも起きているそうです。自宅でキムチを漬ける事が敬遠され、食品会社で作られた(隠し味をかなり省いた)画一的なキムチが幅を利かすようになっているそうです。その家に代々伝わったオリジナルの複雑な味は失われてゆきます。でも、そういう淡泊なキムチのおかげで、我々日本人もいつでも韓国産キムチを味わえる様になりました。そういうのはキムチと言うのでしょうか?昔のキムチを知っている人なら「否」と答えるでしょう。でもコンビニのそれが初体験で、それに満足できる人なら「それがキムチだ」と言うでしょう。昔のキムチを知る人なら、そこでコンビニには行かず、自分で漬けるか、名だたるレストランの常連になるでしょう。
 どちらが正しいとか言うよりも、それが「スタンダード」と「エンスージアスト」の分かれ目になるという事だと僕は思います。



3に続く