23:アルファはなぜ楽しいか(3)(1997/12/05)

 「エンジンが官能的だから」とかいう安直な表現では片付けないことにします。そんなのはアルファに限った形容詞ではありません。確かにあのエンジンは官能的です。でも、同じくらいロータスのエンジンも官能的だし、V-TECだって、ある価値観と文化的な背景で味わえば、決して欧車しか認めない人々が揶揄する「電気モーター」という表現ほど無機質ではないと僕は思います。僕はむしろ現代のアルファは次第に80年代のHONDAのスポーツエンジンにそのフィールがとても似て来つつある様な気がしています(主観)。さらに、そもそも日本車は新車の時からマフラーで欧車にハンディを負っています。「ちゃんとした」排気音は、スポーツマフラーからしか聞こえないし、初めからANSAとウェーバー(インジェクションも)が付いてるアルファが「いい音」をさせるのは当り前なんです。アルファの4気筒エンジンの5000rpmからの純粋な音なんて、轟音以外の何者でもありません。(レブリミットを超えるとまたイイ音なんだけど)

 アルファのエンジンに対するあまりに有名な形容「回りたがるエンジン」という表現も、それだけでは誤解を招くでしょう。実のところ、gtv2.0に積まれている1962ccDOHCエンジンを例に挙げると、決して高回転型ではないことにすぐに気付きます。スペック的に見ただけでも1300ccのエンジンを除けば、アルファのエンジンは大同小異そんな感じです。まずレブリミットが6000rpmぐらいまでしかない。最高出力は5400rpmで出てしまう。こういう数字を並べるまでもなく、アルファの4気筒(8バルブ)は明らかに前時代的なユニットです。まあ、回す気にさせる事は確かですが。

 ドライバーが無意識に設定しているエンジン回転数と速度の相関にはギア比が大きく絡んでいます。日本の運転方法のスタンダードはトルクで走る方法です。でないとストップ&ゴーがとても辛いし、元々国民性からか、伝統的にトップギアでの加速度を重要視する傾向にあります。だからどうしても最大トルク以上の回転域を使う機会も少ないし、大方のクルマのギア比も似通ったものになっています。これが日本車の特徴です。ところが少し古いアルファやラテン車、特に大衆車に多いのは、最大トルクにギア比を合わせてないクルマです。

 Alfaに限らず、ラテン系の小型車に乗ると、どうしても標準的な国産車よりも1000rpmは多く回さないと前に進みません。回りたがるというのも否定はできませんが、どちらかというと「回す必要が有るから」回りたがる仕様になっているという方が当たっているかもしれません。そして、一旦トルクピークを超えてからふと我に帰ると、流れをリードしてることに気がつくという訳です。

 カーブや障害物、テクニックや見切り能力に個人差の大きい公道上では、加速感や合理的(スペック的)な発進よりも、どれだけ長い時間、各ギアにおける最高速度(つまりはエンジンの回転)を保持できるかがキーになります。そしてアルファのおかしなギア比は、それを強力にバックアップする構成になっています。

Alfaやパンダに乗ると「回せぇ〜!回せぇ〜!」クルマがそう叫んでる様に聞こえます。

 ここである重要な点に気付きます。「アルファは重い」「アルファは非力だ」と感じるのは、スポーツカーや大排気量の高級車と比較して考えるからで、もしこれをもっとヨーロッパ車の大衆車の視点、つまり「大衆車とは限られたガソリンと小さいエンジンのパワー(馬力)を100%使って走るべきものだ」という価値観を軸にして考えるとどうでしょうか。

 ここまで来ると、そもそも大衆車とは何ぞや?という話もしなくてはいけなくなってややこしいのですが、そういう視点でアルファを見た時に初めて、アルファは、この「大衆車」という歴史的カテゴリーの中である意味で数少ない特異な存在であった事に気付くのです。そして、数値的性能では劣っているにも関わらず「速く走る」という点でクルマ好きを夢中にさせるほどの魅力を今日まで失わずに済んだ貴重なクルマだということに気付くのです。

まあとにかく、アルファのエンジンを回して走る事は楽しくて、そして「必要なこと」であることは確かですね。



24に続く