36:妙な再会(1998/03/14)
 「である」調の文章は得意だけど、あまり長くなると書くほうも読むほうも疲れちゃうのでインプレッションはこのぐらいにしておいて、再び徒然な話に戻ります。

 gtv2.0(Alfetta)というクルマは、いい意味でも悪い意味でも他のクルマと比較できる様な要素が少ないクルマでした。もちろん、それは「アルファロメオ」として、同時代に設計されたクルマ達と比較しての話ですが、現代車ともなるとなおさらです。経年変化の事を差し引いて考えても、Alfettaというクルマは一種変種の様なところがあるクルマでした。

 ところで先日、足周りのチェックのために75TSは初のガレージ入庫をしました。買ったショップに修理やメンテを頼む醍醐味は、なんといっても代車です。あまり高価なクルマに乗ることはできませんが、これまでもパンダやローバーミニなど購入予定はないけど「乗りたいな」と思っていたクルマと幸せな数日を過ごした思い出があります。代車が思いのほか気に入って、しかも愛車の修理が長引けば、それなりのインプレッション資料さえ手に入れる事ができます。もちろん、今回も新しい出会いを期待してショップに行きました。案内されて、ランチャやプジョーの前を通りすぎ...すまなそうな顔をしている営業の手のひらを見ると、どうも見覚えのあるキーが...。そう、ついこないだまでの僕の愛車です!思わずズッコケてしまいました。せっかく断腸の思いで手放したAlfettaが、75TSの代車として僕の目の前でニッコリ笑っていたのですから。普通、こういう事ってありえるのでしょうか?ちょうど緊急の入庫車があって、予定していた代車がダブルブッキングになってしまったらしいのですが、Alfettaはさすがにそのお客さんには乗りこなせないだろうという事で、僕に回ってきたらしいのです。まあ、乗りなれたクルマだし、ボロとは言え、ずいぶんとかわいがったクルマです。文句はありませんが、それにしても因果な情景でした。

 久しぶりに乗るAlfettaは少し調子を崩している様でした。前日の雨に当たった事もあるのでしょうが、初めのうちは時々1発サボるような息つきを起こしていました。たとえ毎日暖気運転を心がけても、実際に乗らないと3〜4日もすれば調子を崩していましたから「ほとんど乗ってないな?」という感じでした。そういえば距離計も記憶が正しければ殆ど動いてなかった様です。
 「人様」のクルマにもかかわらず、僕は「アタリをつけなくちゃダメだなこりゃ」という気持ちになっていました。おまけに「そういえばオイルもだいぶくたびれているはずだ」と考え出す始末。オイルの算段をし始めている自分に気付いて慌てて頭を振りました。何を考えてるんでしょうね、全く。
 エンジンを暖めながら少しずつ高回転まで回して行くうちに、すっかりAlfettaは調子を取り戻しました。アイドリングは相変わらずユサユサしますが、原因は分かっているので気にしません。それにしてもAlfettaの素晴しいこと! 1速で思い切り引っ張り、回転が落ちるのをワンテンポ待ってから2速に放り込みます。この儀式は旧車乗りならではの楽しさです。6000rpmまで豪快に伸びてゆくエンジンも、メカニカルなノイズも、クルマ好きの五感をめいっぱい刺激してやみません。「一体なんだ?この違いは?」僕はふと、メンテナンス計画の挫折で胃を痛めた事もすっかり忘れて、Alfettaを手放してしまった事を後悔している自分に気がつきました。

 75TSもいいクルマです。それなりに気に入っています。なんといったって「アルファを実用的に使える」という安心と喜びがあります。そして、Alfettaを売って75TSに乗り込んだ時、僕はえも言われぬ安心感と充実感に満たされたのは確かです。だから「同じトランスアクスルなんだから、絶対に75TSの方がイイに決まっている」とアタマから決めつけていました。でも、ふとした偶然で「もう二度と再会することはないのだろう」と思っていたAlfettaのステアリングを握った途端、いかにこの二つのクルマが異質の存在であるか、初めて気付かされることになったのです。



37に続く