36 75を手放す(2002/10/02)


 あれから数日間、考えたり話し合ったりした結果、これ以上所有していてもデメリットだけが多くなるだろうという結論に至りました。引き取って貰った先からの「修理整備してなんとか商品にできます」との判断にも一安心、そのままお任せすることにして、ひとまず手放すことにしました。

 もちろんその前にも途中にも、様々な煩悶や逡巡があったのですが、今はそれを敢えてここに書くのはよそうと思います。ひとつだけ言えることは、今回、僕は75を手放す時、アルフェッタを手放したときほどの未練も後悔も無力感も感じずに済んだという点です。75の特性もあるでしょうし、「分かる人に持っていって貰った」という安心感も大きいと思います。一番大きいのは、自分の中で「イタリアのクルマ」というものに対して、ある一定の理解や評価ができあがったなと感じたこと、アルファに乗るという事が、自分にとっては避けて通れない通過点であったこと、それを土台にして、自分が一生つきあえるだろう自動車の姿が、やっとおぼろげに見えてきたなあと思った事です。「ふっきれた」と言ってもいいかも知れません。なにはともあれ、これを機会に、自分のクルマに対する姿勢や考え方を、少し見直してみようと思っています。

 それから約一ヶ月間、僕は久しぶりにアシグルマなしの生活を体験しました。クルマを使用するメインは、買い物などの日常の生活と、仕事の打ち合わせのための都内の移動です。仕事の打ち合わせは、コーチメン(フォードベースのキャンピングカー)で移動してもいいのですが、都内には平日に全長6m、高さ3mのクルマを停められる駐車場なんて皆無ですから、ほとんど使い物にはなりません。また燃費も馬鹿にできません。だから電車を使うことにしました。
 
タクシーと電車を使って合計1時間〜1時間半程度ですから、クルマと同じかむしろ速いほどです。しかも、空いている時間帯には、読みたかった文庫本を乱読する事もあって、まるで田園都市の美味しい部分を独り占めするような小旅行。

 帰りはさすがにそういう訳にもいきません。ラッシュはもちろんの事ですが、午後9時を回ると山手線西側を走って南北に抜ける電車の本数が極端に減るため、ヘタをすると連絡のマズさから家に着くまでに2時間もかかることがあります。
  ただ僕が利用する路線は、混んでいてもあまり殺伐とした雰囲気がないのが救いです。別に苦痛でどうしようもないというほど毎日乗っている訳ではありませんから、それもまた旅行気分で切り抜ける事ができなくもありません。
 駅から家まで歩くのも、一度だけチャレンジしてみました。クルマだと空いている時で10分ぐらいなのですが、歩くと40分以上かかりました。

 この辺はクルマがなければ一日だって生きていくことなんかできない街です。全てのインフラはクルマ中心にできている。だからこの一ヶ月間は、普段の買い物や市内の用足しには毎日キャンピングカーを繰り出していました。
 最初のうちは「6×2mじゃよほど難儀するだろうな」と思っていましたが、実際にはスーパーマーケット、DIYショップ、電器屋はもちろんのこと、コンビニも銀行のATMも、市役所も病院も、ファミリーレストランさえも、僕が運転する限りは、何の問題もなく用が足りてしまいました。用が足せなかったのは2つ。郵便局(地元の特定郵便局故。小型車用のスペースは3枠ほどある)、本屋(どういうわけか狭路の先に駐車場)でしたが、これらはどちらも徒歩10分圏内なので問題外と言えば問題外でした。「ふ〜ん、意外にやれるもんだなあ」と思いました。



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