17:取り替えて済むものだけど(1997/11/18)

 アルファは全般的に、いつ作られたクルマであっても、それが走行するために必要な機能部品の供給が跡絶えることはありません。1950年代のアルファでもちゃんと修理できます。しかし、それだからといって、何でも買ってから対処して済むというものではないようです。Alfettaに特有のものも含めて、どういった点に気を付けたらいいのでしょうか。(もし殊勝にも「これを書き忘れてるぞ」とお気づきの方がいらっしゃいましたらぜひメールを下さい)

1:エンジン

 gtv2.0('82)には、ショップ入庫後のヘッドOHと排気側バルブ交換の記録がありました。よく広告などで「エンジンOH済み」という表記があるとむやみにありがたがる人がいますが、個人的にはあまり好きな項目ではありません。何故ならOH自体ではなく「何故そんな必要があったか」という原因の方が重要だからです。普通のクルマならエンジンが逝ったら「廃車」ですからねえ。調子良く動いていたエンジンなら未再生で行くところまで行った方がいいと思っています。ただ、大事にされたエンジンには回し癖がついてない場合もありますから、一概にノントラブルだった事が100点満点だとは言い切れないのですが。
 今回の場合は燃圧チェックの段階で見つけたトラブルとの事情と、合わせてバルブタイミングやチェーンのチェックもされているとの事で、その点はショップを信頼することにしました。そして現在までノントラブルを続けています。

 エンジンについての他人のトラブル話は枚挙にいとまがありません。オイル上がり下がりは勿論の事ここでは書き切れないほどなので省略します。高年式の国産車を見立てる場合、このエンジンの調子というのは優先項目から外れてもさほど影響はありませんが、アルファやその他の欧車の場合は違います。「Assyまるごと交換」などという最悪のハメに陥らないためには、目を凝らし、耳を澄まし、神経を研ぎ澄ましてもまだ足りません。本当の調子を知るためには、明らかな異音はともかく、事前に「完調」と言われるアルファのサウンドや状態を知り、それと比較するしかありません。何かと理由をつけてエンジンオンを渋ったり、火の入らない状態で保管しているショップは、どんなに「納車整備」を主張してもインチキですから近寄らない事です。 ところで、中古車の見立ての際に、やたらとオイルのにじみを気にする人がいますが、アルファのオイルゲージは「にじむように」できています。「どこからオイルが出ているか」が問題なので、そっちを気にしましょう。

 もう一つ古くなったクルマに共通の弱点である「エンジンマウント」ですが、これのヘたり具合はちゃんと確認しておいた方がいいと思います。僕のもかなりヘタりが来ており、来年中には交換するつもりでいます。

2:ミッション

 ミッションの状態は実際に試乗してみなければ分かりませんが、実際の話アルファのシフトを実際に体験したことがない人にとっては全く意味のない項目とも言えます。アルファや昔のクルマのミッションに慣れると、それが当り前の様に感じますが、そもそもAlfettaはシフトフィールも変です。それと、少し前のクルマなら国産だろうとゲルマンだろうと、1速で引っぱりすぎると2速にちゃんと入れるのにギアの歯を数ミリ削るハメになります。そしてアルファの場合、これが極端に出ます。アルファ、特にAlfettaのミッションはシグナルグランプリで、いの一番に抜け出すという重労働には元々向いていません。次のコーナーで抜けるのですから慌てずにシフトアップしましょう。ギアを消耗品として考えているでない限りノーマルのままでポールポジションを取る事だけはくれぐれも避けた方が無難です。(経験車談)

 あとはシンクロスリーブのヘタリの問題ですが、これは近い過去にミッションOHの記録がない以上は、自分が所有しているどこかの段階で必ず交換が必要になる項目だそうです。もしかしてアルファにとってはボディだけじゃなくシンクロもサービス?

 それからAlfettaなどトランスアクスルに共通の、ミッションマウントの問題ですが、ラストチェンジがいつだったのか調べておきましょう。取り替えた形跡がなく、次の車検まで期間があるようなら購入は避けたほうが無難でしょう。

3:ブッシュ類(足回り含む)

 これってよく中古車購入の重要なポイントとして挙げられていますが、実際には新品でも付いていない限りそのブッシュがあとどのくらい持つか、判断するのがなかなか難しいポイントです。「破れ」や「裂け」がないのは基本としても、本当の意味で調子良く乗りたいなら新品でなければ意味がない部分とも言えます。そもそも僕は5年落ち以上の欧車で理想的な状態のクルマにお目にかかった事は殆どありません。特にAlfettaは復元整備が実にないがしろにされている不幸なクルマです。自分でコストを負担してでも交換を依頼する覚悟は決めておいた方がいいと思います。

 僕の場合、1997年11月現在、主治医からは来年夏あたりまでにフロントサス周りのブッシュ交換を推奨されています。購入の際にはもっと短く予測していたので、2年以上持ったという事で少し安心しています。

4:等速ジョイントラバー

 聞き慣れない名前のこの部品は、Alfetta以降75までのFRアルファ特有のものです。普通のFR車はセンターに「ドライブシャフト」がユニバーサルジョイントによって連結されていますが、アルファはエンジンの回転と同じ速度で回っている「プロペラシャフト」がジョイントラバーで連結されています。このジョイントラバーは、前・中・後、計3つありますが、車検毎に交換するのがノーマルになっています。これは確実にひび割れ等がないかチェックし、もし前車検時に交換された形跡がなければ購入時に交換してもらうことを強くお勧めします。僕の場合、これには事前の聞きかじりでかなり脅かされていた事もあり、目立ったひび割れはなかったものの、中・後を納車時に、前を次年の車検時に交換しました。ちなみに、このラバージョイントが切れても瞬時にどこかに損傷が起きるということはなく、振動や異音でその前兆を知らせてくれるそうです。そのため「音がしないうちは気にすることはないよ」という倹約派の人もいます。

5:点火、電気系統

 gtv2.0('82)の場合、点火も電気系統もガタガタの状態でした。そして「こんなものはすぐに直してくれるだろう」と、少しタカをくくっていました。しかしアルファのメカニックに電気に強い方は少ないそうです。そして僕が購入したショップは、不得意を通り超して泣きべそをかいていました。が、僕にとっては重要です。この部分がネックになって、いつまでたっても納車されないので「もういいよ、自分でやるから!」と叫んで奪いとってきました。

 単なる素人の推測に過ぎませんが、よく「旧車がエンストしてるのを見た」とか「自分のはよくとまる」と聞く話の半数以上は点火、電気系統の整備不良の様に思います。根本的解決はプロの手を借りなければなりませんが、「止まらない」ようにすること自体は素人でもそれなりにできる事です。前にも書きましたが、gtv2.0('82)は納車時から原因不明のエンストが続いていました。買ったショップのメカには同情こそすれ恨みはないので、自分でいろいろ探った結果、それが一次コイル周りの接触不良という、実に初歩的な事だというのに気がつきました。半年かかりましたが、これ、ケチなショップじゃ一生分からない部分でしょうね。だってコネクタの接触不良なんて「交換」しないと気付かないことですから。そういう訳で、僕のアルファはどこかで立ち往生するという様な事は一切起きていません。

 こうしてアルファのメカニズムをチェックしてゆくと、ある点に気付くと思います。つまり、「いつ交換したか」によってそのクルマの程度がある程度分かってしまうという点です。特にアルファは他の車種に比べて消耗部品が圧倒的に多く、それらを取り替えればどんどん調子があがってゆくと言われています。ある時点で箸にも棒にもかからなくなる様なクルマではないということです。でも、どれもこれも交換部品だなんてまるでレーサーみたいな話です。おいそれと2台も3台も持てないなあ。

 時に「オレのは走ってる時よりガレージに入院している方が長いなあ」という寂しい方へおせっかいですが、絶対に整備と部品交換の順序を「故障する順に」してはいけません。妙に目立たない、細かい部品が多大な出費を生む事になります。そうならないためにはまず信頼できるメカニックを見つけ、予防方法を聞き出して、気長に完調を目指すことです。そうすればどんな大古車(良く言えば旧車)でもちゃんと足代わりに使えるはずです。(なーんて僕もかなり授業料払いましたが)



18に続く