40:代車から学ぶこと(1998/04/24)


 「イタ車は乗っている時より入院している時の方が長い」
この法則を、僕は75TSで生まれて初めて体験しました(笑) 納車直後、前サスとステアリングセンター、ブレーキの不調に気付いて最初に入庫したのが20日ほど経った頃。戻ってきてからも前サスの状態がどうも気に入らなくて再入庫したのがその5日後。納車後60日の間、僕が実際に運転していたのは実質25日程度です。半分以上は修理工場に入っている勘定になります。  

 納車後こんなに長い期間、工場に入れた経験はなかったので、とても新鮮な体験になりました。 これを読んだ方の中には「だからイタ車なんてイヤなんだ」と思う人もいるかもしれませんね。でも、「古いガイシャ」に乗る楽しみの中には代車の楽しみというのもあるんです。それはもちろん、代車サービスが充実したショップと付き合うというのが大前提にはなりますが、そういうショップでは、整備前の古めの小さなクルマを代車として貸し出すシステムがあります。整備や修理を依頼する代わりに、普段は乗れそうもない、あるいは購入候補には絶対上がらないが乗ってみたいクルマというものをチョイ乗りでは決して得られない、仮オーナーとして付き合うことができるのです。じゃあこのシステムを取っているショップこそアフターサービスが万全か?というと、そうでもなくて、実はユーザーから見ると、様々な問題点を抱えていたりするのですが、その話は後ほど。

 とにかくそうして僕はこれまで何台かの小粋な欧車と出会う事ができました。ローバーミニ、フィアットパンダ、プジョー205e.t.c.そして今回はプジョー505 V6でした。こんなマイナーなクルマ、普通なら好き好んでオーナーにならなければ決して味わえないクルマです。中には純粋にクルマ好きからすると「イヤだなあ」という代車に出会う事もあります。国産のリッターカーやハイデッキの4WDが代車になった時は、本当に運転するのが辛かった記憶があります。  しかしこうしていろんなクルマに乗ってみると、つくづくクルマという道具について考えさせられる事が多いのも事実です。 そこには環境問題、資源の問題、安全性の問題、ドライバーの資質の問題が、凝縮されて見えてきます。

 今、クルマは、環境、資源、安全性という三つの大きな壁を乗り超えられないでいます。しかもその状況は年々厳しくなってきていながら、状況として殆ど進歩していないどころか悪化する一方なのです。「電気自動車が出た」とか「ベンツやトヨタは高度な安全性を実現しているじゃないか」というのは少し楽観的過ぎていて、新聞記事やメーカーの広告にあるような、希望的な状況はとても少ないのです。例えば環境面で言えば、日本人が世界一だと思って胸を張るリーンバーンエンジンや直噴エンジンは、環境問題や資源の問題により深刻な影響を投げかけています。それらのエンジンが良くないということではありません。その存在自体は素晴しい事です。
 この手の問題を最も大きくしているのは、ここからは僕の持論でもあるのですが、「クルマ趣味」の人でも「メーカー」でもなく、クルマを家財道具として使っている我々の選択肢、見識だということを敢えて書かなければなりません。クルマに興味がないからといって、その成り立ちを無視することは不可能な時代なのです。もし現代社会で人間らしい生活を続けたいのなら、クルマについてより深く知らなければなりません。もし自動車免許を持っていないとしても、あなたは日々環境を破壊しています。そして、「クルマについて知る」ということの本質は、絶対的性能を知ることでもドライビングテクニックを磨くことでもなく、自分のライフスタイルとクルマの関係について日々検証してゆくという事でもあります。ちょっと抽象的ですが、食べる、眠る、仕事をする...一挙手一投足が道具とどう関わっているのかを知る、それはクルマに限らないことでもあります。

 それはともかく、75TSは納車直後にちょっとした不具合を発見してから何度か入院を繰り返したのですが、まさかこれがその後の苦労の始まりになるとは、その時はまだ夢にも思わず、能天気に代車を乗り回していたのですが...。



41に続く