21 トルクにやられてみる(2001/09/30)

単なる好奇心や興味だけでは、なかなかそのクルマのステアリングを握るところまでは行けません。

けれども不思議な事に好奇心だけでは縁のなかったものも、幾ばくかの知識を得て、それが欲求や熱望の方向に少しでも針が振れた時、瞬時にしてその出会いは訪れます。

もしその機会が来たなら一切の遠慮や躊躇なしに、ドライバーズシートかパセンジャーズシートに座るべきだと思います。

でないと、チャンスはあっという間に去ってゆきます。まさに一期一会。

 僕はデザインの研究室でクルマ好きの同窓や師に囲まれながら、どういうわけかずっとバイクに明け暮れていた。そのせいもあってなのか4輪の免許を取ったのが22歳とかなり遅い。そのコンプレックスも手伝って、免許取得後は人一倍貪欲にいろんなクルマに乗りたがった。代車で借りたオンボロのスターレットでさえ真剣にむさぼるようにそのステアリングを握った。元来クルマが大好きだという事もあるけれど、幸運もたくさんある。クルマに関しては本当、いろんなクルマを味合わせてもらっていつも感謝している。
  どんなクルマも白黒つけようと思えばそれぞれ長所も欠点もある。けれど、どれも甲乙付けがたい魅力を持っている。だから評論家のようにブッた切って味わってしまうと楽しくない。他人の評価を思い出しながら乗るのではなく、そのクルマをどうやって楽しむか、それを自分なりに考えると、どんなクルマでも楽しくなる。

というわけで、フォード車との出会いも突然でした。つい数ヶ月前。

フォードといってもフォードトラック(バン)。

エコノラインE350をベースにしたB.C.ヴァーノン19ftというミニモーターホーム。

試乗…といってもせいぜい数キロのチョイ乗りだけれど、それでも十分ラッキー&ハッピーといえる様な出来事でした。

なぜならこのB.C.ヴァーノン、キャンピングカーの事を調べてゆくと誰しも必ず行き当たる、一種の到達点のようなクルマだからです。

もちろん別にE350をベースにしているのはヴァーノンだけではありません。アメリカンモーターホームではごく標準的なベース車です。

だからまあ、キャンパーとしてのヴァーノンの魅力については別の機会に譲るとして、僕がこのE350というクルマから受けたショックは、フォードであるとかキャンピングカーであるとか、そんなところにはありませんでした。

ミニといっても重量は3tをはるかに超えます。説明では総重量で4tをちょっと切る程になるとのこと。そしてエンジンはV10で6800ccもあります。運転席の視線は1.5tよりやや高め(2t車と同程度か)。

この図体がアクセルちょい踏みでぐわっと身体を後ろに持って行き、あっという間に交通 の流れをリードする程加速してしまいます。

それなのに排気ブレーキ一つ装備されていない、この妙なアンバランスさ。

ヴァーノンに限らず、米国製のモーターホームは例えば箱根の新道をフットブレーキだけで降りてくると、確実に焼き付きを起こすそうです。マジで恐ろしい。。。

V10エンジンというのも生まれて初めて味わいました。これは掛け値なしに凄いですね。

大昔マーキュリーの何かとトヨタのセルシオでほんのちょっとだけ知ったつもりになっていた僕のVエンジンのイメージというのは、絶えずクルマの重量 (というよりサスの沈み込み) と戦ってるようなものでした。

もちろん、カマロなどのマッシブアメリカンカーを知らなかった訳ではないのですが。

けれどもV10のトルクというのはちょっとハンパではありません。せいぜい1.5tの2シーターをひっぱるならまだしも、4tになんなんとする巨体(荷物満載時の2tトラックに相当)を、軽々と追い越し車線に引っ張り上げてしまうというのは何とも不思議な感覚。

聞けば、それでもV8の頃より排気量が減ってトルク発生回転数が上がってる分、トルク感が痩せたそうですが。。。(6800cc, 58kg-m/3250rpm)

でも58kg-mというトルクは日本車の2t積みのトラックよりずっと大きな数字です。

ヘタすると小さめの4t積みより大きいです。ちなみに4t積みは通常クルマの総重量 が約8tになります。

2t積み(総重量約4t)の代表格のエルフで37kg-m、三菱キャンターの4t積み(総重量 約8t)で42kg-m、日野の4t積み(総重量8t)で大きなものは72kg-mあるがこれは8t積み(総重量 16t)ぐらいまで共通エンジンのはず。

そして実感としては日野よりヴァーノンの方が加速感は高いです。>>日野レンジャーのインプレ

なんでなのかすごく気になって、数値を調べてみると、何となくその理由が分かりました。

ディーゼルエンジンというのは、だいたい2000rpmも出せばトルクはほぼ頭打ちです。(たいていは1600rpm付近が最大トルク)

ところがV10ガソリンエンジンのそれは、2000rpmあたりで既にトルクがフラットに出て、なおかつそれが3000rpmまで続くのです。

トルクバンドが異様に広い。だからモリモリ引っ張っていく感じが長く続いて、結果 加速感が高いわけです。

ざっと概算してもフォードのトラックシャシーは日本車の2/3か、ヘタすると1/2程度の負荷で走っている事になります。

もちろんアメ車だってパワーのあるガソリン車だけが使われている訳ではありません。

ガソリンエンジンが主流だとしても、ガソリンの価格差(もっぱらこの差はガソリンそのものではなく税金の差なのだが)という事情もあるかもしれません。

でもそれだけでは「商用車」というカテゴリーにおける、これほどの力の差異の理由を説明することはできないのです。

正直言ってカルチャーショックでした。

日本の普通〜中型トラックは加速が悪くて制動がいい。加速が悪いから一度減速すると加速するのに結構労力がいる。だから減速したがらない、そして補助制動がある程度しっかりしてるから、視界のいいトラックはガンガンに車間距離を詰めたがるドライバー多し。ヨーロッパ車では普通 トラックはやはりトルクが低いトラックが多いらしい。が、それでも大きくなればなるほど日本車よりもトルクもパワーもおしなべて高くなる傾向が見える。



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