ぐうたら犬と暮らそう

スワレとマテ

 そんな訳で、服従訓練で物覚えが悪いからといって、いいパートナードッグになれない訳ではなく、楽しく「心静かに」暮らすためにはそんなに肩に力を入れなくてもいいのです。

 極端な話、コマンドの中で最低必要なのは「スワレ」と「マテ」だけじゃないかと僕は思っています。日常犬と良い関係を育んでゆくためには、これだけで必要十分という気がします。ただしこの2つだけはしつけよりも優先するし、完璧にできる必要があるかもしれません。どうしてかと言えば、犬の感情のコントロールに繋がるからです。感情のコントロールは主従にとても大事な影響を及ぼします。
  この2つのコマンドは給餌の時に誰でもやっていることでしょう。ただ本当にこれの意味を分かって自在に駆使している人は案外少ないみたいです。そもそも食事の時だけできても、何の意味もありません。朝から晩まで犬とコンタクトを取るたびにこのコマンドを人間も犬も反射的にやりとりする必要があるのです。何でもかんでもスワレで始まりスワレで終わるぐらいです。そして主従に関係なく、誰のコマンドに対しても、どんな場面 でも、一度のコマンドでできる必要があります。そのためには毎日毎日根気よく、犬が寄ってきた時、何かコンタクトを取るとき、留守番させた時、遊ぶ前、遊んだ後、寝る前、起きた時、とにもかくにも「スワレ」「マテ」をやりとりする習慣をつけます。

 スワレとマテを早く習得するコツは、ひとつは必ずアイコンタクトすること。給餌の時なら、餌を見ながら待つのではなく、人間の目を見て待たせる事。自分を見るまで絶対に解除しないこと、どうしてもアイコンタクトできない時は人差し指を犬の鼻先から自分の鼻先に移動させます。それからもうひとつのコツは、声だけでなく、必ず手で合図をしながらコマンドを出す事です。スワレなら手のひらを上に上げるポーズ、マテなら手のひらを犬に向けて制止するポーズです。

 スワレとマテがちゃんと定着しているかどうかは、次の様な時に分かります。
  マンションの向かいの部屋に、黒ラブとセッターを飼っているカップルがいます。躾に相当苦労しているようで、廊下からは毎日のように下の様なやりとりが響いてきます。おそらく散歩の前の会話だと思うのですが

(ドアが開く音)
「○○(犬の名前)、スワレー、イケナイ!スワレー・・・スワレー!」
「(ガチャガチャ・・・)」(犬の爪が暴れる音)
「イケナイ!、スワレー」
「(ガチャガチャガチャ・・・・) 」(犬がリードを引っ張りまくって去ってゆく音)

 小耳に挟んだこのやりとりだけでも、犬がまったくオーナーのコマンドに反応してない事が分かります。 そしていろんな教訓を示してくれています。

  • コマンドを出しながら制止コマンドも出している
  • 何度も同じコマンドを出している(おそらく犬は耳に入っていない)
  • コマンドの声が大きい
  • 犬は興奮しきっている
  • 人間がその興奮を大声で助長させている
  • 誉めていない(誉められるような状況ができてないとは思いますが)
  • できていないのに状況は「散歩」に向かって着実に進んでいる
  • 従って犬は暴れれば暴れるほど、早く散歩に行けることになる

聞いてるだけでかわいそうになってしまいます。こんな状況下で散歩が始まるなら僕なら1日で散歩がイヤになるでしょう。でも、案外こういう状況に陥っているオーナーは多いみたいです。

解決策の一例)
 リードを付ける前(玄関の戸を開ける前)に、玄関の前で「スワレ」を一度だけ、犬が聞こえるように命じます。アイコンタクトがとれるならそれに越したことはありません。興奮して暴れているうちは絶対に開けないし、人間は立ったまま動きません。 興奮が収まらない様ならそのまま部屋に戻ってしまいます。そしてもう一度やり直します。できたら当然誉めます。 一連の人間の全ての動作はスローモーにします。最初はスワレができて誉めたら、それ以上の事を望んでもしかたがありません。でも最終的には玄関の戸は人間が最初に出るようにならなければなりません。例えばこんな風に。

  1. 座れ〜Good!〜(リード)---行こう(戸を開けて)
  2. 座れ〜待て〜(リード)〜Good!---行こう(戸を開けて)
  3. 座れ〜待て〜(リード)〜〜〜(戸を開ける)(人間が出る)〜〜〜行こう〜Good!(完成!)

 

 もし困っているなら試してみる価値はあると思います。でもこれが100%完全な方法という訳ではないので自分で工夫しながらアレンジしてやってみてください。これを覚えるだけで、留守番をさせなくちゃならない時や、散歩の時の精神的負担がずっと軽くなります。

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