ぐうたら犬と暮らそう

手作りフードは楽しい-2-

食べ物と関節形成の因果関係

 レトリーバーの股関節形成不全の問題は世界的に取りざたされています。

股関節形成不全症についての詳細な説明は検索すればいくらでも出てきますのでここでは省きますが、ブリーディングコントロールの行き届いていない日本などでは、かなり深刻な問題になっています。

  けれども -これはあくまでも個人的な見解ですが- 股関節形成不全の問題で遺伝因子の影響だけがクローズアップされるのがどうしても納得できません。

特に気になるのは、他の遺伝病のほとんどが、問題視されてからほどなくキャリアと発現率の特定ができているのに比べて、股関節不全症候群は様々な犬種で問題視されながら、キャリア遺伝子の特定ができず、いまだに発現犬の淘汰だけが唯一の予防法だという点です。

 ひどい例では、3代遡って全く発現していないルートからでも、ある日突然股関節不全の犬が出るという、にわかには信じられない話も耳にします。

こういうのまで遺伝性の問題と捉えてしまっていることに、この問題の片手落ちを感じてしまいます。

果たして全部が全部先天性なのでしょうか?後天的関節不全として区別するべき症例があるのではないでしょうか?

この病気の要因として、先天的な股関節の形状の他に、成長段階での運動方法と、栄養補給の方法が深く関わっているのではないかと考えています。

その根拠として、股関節不全のレトリーバーの症状軽減のために、コラーゲンやコンドロイチンを継続的に投与すると、症状が軽減するだけでなく、股関節自体の形状が正常化の方向に向かっていったという報告例がいくつもある点に注目しました。

コラーゲンやコンドロイチンが作用しているという事は、軟骨や関節の生成過程と股関節不全の進行との間に深い相関関係があるという事です。

コンドロイチンは人間にも必要な物質で、細胞と細胞を結びつけたり、骨や軟骨、関節の生成に大きな影響を及ぼす物質です。

これを摂取することができないと、人間の場合は40歳代ぐらいから急激に老化が始まると言われています。

犬の場合、果たしてこれが体内で生成されているのかどうかは分かりません。

けれども元々犬が肉食動物であることを考えると、何もしなくても生成されるとはちょっと考えにくいものがあります。

もちろん、科学的根拠に基づいてそう考えているのではありません。

けれども、こういった食物と健康に関する感覚や調子というものは、全てとは言いませんが、往々にして西洋的な科学よりも東洋的な経験や言い伝え、直感が当たってたりする事もあるので、僕はその勘を尊重することにしました。

ですからサプリメントに頼るのはちょっと芸がありません。野生の知恵で、自然に摂れる食べ物から、関節の健全な形成を促しそうな食餌のレシピはないものでしょうか?


 

手羽先

我が家では、鶏の手羽先と牛スジ肉をレシピのかなめにすることにしました。

手羽先を与える場合は生か、酢漬けなど、加熱しない状態で与える必要があります。

加熱してしまうと骨が縦に細かく裂け、また骨と身が離れて剥き出しになってしまうので、犬は食べられません。

生であげれば、犬は上手に骨をかみ砕いてから丸呑みします。

これが彼らなりの美味しくて安全な食べ方らしいです。

手羽先の酢漬けは醸造酢と水1:1位の割合で作ります。
(酸度が2%以上を保てる濃度。普通の醸造酢の酸度は4〜5%)

タッパーに漬け込んで冷蔵庫に保存しておけば1週間以上は日持ちします。

 

牛スジ

牛スジは一旦ゆでこぼしてアクや余分な脂を除いてから、圧力鍋で煮込みます。

これを冷ましてタッパーなどに入れて冷蔵庫で保存すればこれも1週間ぐらいは余裕で日持ちします。(煮込んだお湯も捨てずに一緒にタッパーに入れる)

冷えるとゼラチンがたっぷりと出て固まります。使う時はスプーンなどですくって使います。


 

 さて、この股関節の問題は、食餌だけに注意を払えばいいという訳ではありません。適切な運動のコントロールも重要です。

例えば昔から大型犬(日本では10kgを超えると大型犬)の幼犬時の運動には細心の注意を払うように言われています。

そして幼犬期を過ぎてからも、1歳齢になるまでは運動にコントロールが必要で、こういう事は古くから言われている常識なのです。

 でも最近の傾向はそうではありません。1歳齢に満たないうちからフリスビー犬の訓練を始めたりする例も多く聞きます。

元々体格的にジャンプや急激な方向転換に向かないはずのレトリーバーが、骨格の定まらないうちからそんな激しいスポーツをやったら、遺伝的になんともなくても、関節がおかしくなるのは当たり前です。

これは愛犬家の勉強不足の上に、アメリカ式のドッグトレーニングやドッグスポーツの影響が大きく反映しているのが原因のようです。
アメリカの犬文化はとても進んでいるように思われていますが、一般 のアメリカ人の犬に対する認識というのは日本人とそれほどレベルは違いません。むしろ犬大好きアングロサクソン諸国の中では例外的に遅れているほど。

運動のコントロールとは何でしょうか?

それは骨格や関節の正常な形成を助けるために、1歳齢前後までは自由運動と持続型の運動に重点を置き、瞬発力や激しい体力の消耗の運動をなるべく避けるという事に尽きます。

その代わり、飼い主との絆を深めていくために厳しいしつけに時間とエネルギーを裂きます。

一方、成長途上の子犬の運動不足による破壊活動や度を超したやんちゃぶりに手を焼いてしまうかもしれないという、飼い主の不安がつきまとうかもしれません。

子犬の暴れぶりを見て、運動不足に違いないとか、疲れさせればおとなしくなるだろうと考えるのは無理からぬ 事です。

確かに、家で暴れる気力もなくなるほど運動させれば、犬は一様におとなしくなります。

でもそれは子犬の正常な成長にとってはオーバーワーク以外の何物でもありません。

そして、オーバーワークの運動に頼らなければ子犬をコントロールできないとすれば、それは「子犬のしつけができてない」 と判断すべきです。

本来、子犬であろうと成犬であろうと、しつけによって破壊活動ややんちゃを抑制する事は簡単です。

(2001/10)

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